及川直彦のテキストのアーカイブ

及川直彦が書いたテキストと興味を持ったテキストのアーカイブ

2022-01-01から1年間の記事一覧

柄谷行人の「情報革命」についての見解

柄谷行人(2022)『力と交換様式』 岩波書店 の中から、いわゆる「情報革命」についてシニカルかつ本質的に言及している部分を備忘のために引用。 “ …たとえば、産業資本の場合、貨幣と労働力商品の交換において、労働者・労働組合の同意がなければならない…

統計的有意とともに効果量も大事

定量的な研究において、データの分析の中で統計的有意が論点となることが多いのですが、それに対して、統計的有意の検定とともに、効果量と信頼区間を示すことの重要性が指摘されています。 この指摘を解説した本として、 大久保街亜・岡田謙介 (2012) 『伝…

なぜ有意水準は5%なのか

なぜ有意水準で5%が使われるかについて、今日的な統計学を確立したFisherが1929年に書いている文章があります。以下引用し翻訳をしておきます。 ”In the investigation of living beings by biological methods, statistical tests of significance are esse…

楽しいことを考えている方が良いアイデアが出る

Waseda Business Schoolの修了生と輪読している、ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」の中で、ともすれば私たちの合理的な判断を阻んでいる”悪役”として描かれていた「システム1」が脚光を浴びる部分がある。 この話は、心理学者のサルノフ・メドニ…

飽和と忘却が形づくる「記憶曲線」

Waseda Business Schoolの修了生との勉強会で、ここのところダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」を輪読しているのだが、その中で、「繰り返された経験」が「認知容易性」を高めるという話について議論している中で、広告における「フリークエンシー…

「底が漏れるバケツ」がもたらしたアイデア

レスター・ワンダーマンの「売る広告」の中で、世界最大のばら栽培業者Jackson & Perkins(以後「J&P」)の通信販売のマーケティングにおいて、1950年にこのアイデアに出会ったこの場面も、マーケティングの歴史の中に刻むべきものであろう。 “ 一年がつつが…

ダイレクト・マーケティングの「スプリットラン」

先日のゼミで今日のデジタル広告の世界で「ブランディング広告」と対比して使われる「パフォーマンス広告」のルーツが、「ダイレクト・マーケティング」であることを紹介したのだが、それをきっかけに、レスター・ワンダーマンの「売る広告」の2nd editionの…

論理実証主義と反証主義

少し前にカール・ポパーの『科学的発見の論理』を読んでいて、その中で、ポパーが確率論に基づく帰納法について長々と批判をしている部分など、いまいち文脈が理解できていない部分があったのですが、野家啓一の『科学哲学への招待』の第9章「論理実証主義と…

統計学の科学哲学的な整理

大塚淳の『統計学を哲学する』が、統計学の代表的なアプローチである記述統計、推測統計、統計的因果推論について、科学哲学の文脈でわかりやすく整理していたので、以下要約しました。 観察されたデータを要約する記述統計 記述統計は、標本平均や標本分散…

仮説演繹法とアブダクション

野家啓一の『科学哲学への招待』の中で、私が携わる経営・マーケティングの研究において広く採用されている「仮説演繹法」と、その限界を補う「アブダクション」についてわかりやすく整理されていたので、以下要約しました。 仮説演繹法についての整理 <前…

実証研究の方法論が拠り所とする科学哲学の考え方の整理

藤井秀樹先生の「実証会計学の方法論 –科学哲学的背景の検討を中心に–」という論文において、今日の経営学やマーケティングにおいて使われている実証研究(empirical research)の方法論が拠り所とする科学哲学の考え方についてわかりやすく整理されていたの…

柄谷行人による「反証可能性」についての説明

カール・ポパーの「反証可能性」について、その本質を明快に説明していた柄谷行人の説明がありましたので、該当する部分の一部を備忘のため引用します。 “ たとえば、デカルトはすでに仮説を立て、それを検証する実験を考案することを主張している。したがっ…

「サピエンス全史」と「世界史の構造」を改めて読む

現在起こっている戦争を目にしながら、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」と柄谷行人の「世界史の構造」の「戦争」に関連する部分を改めて読み返し、気になった部分を備忘として引用します。 まず、ユヴァル・ノア・ハラリの「サピエンス全史」の第…