及川直彦のテキストのアーカイブ

及川直彦が書いたテキストと興味を持ったテキストのアーカイブ

2023-01-01から1年間の記事一覧

繰り返しとバリエーションの効果(続き)

前回の「繰り返しとバリエーションの効果」を書いたときに探していた、 "我々は「以前見たのと同じもの」だと認知されていて、かつ、よく見ると以前見たときから少し変化しているものを、より情報処理しやすい傾向がある」" というモデルの話の続きです。 そ…

繰り返しとバリエーションの効果

2010年頃だっただろうか、マーケティングではなく、認知科学系の研究者の方と話していて、 "我々は「以前見たのと同じもの」だと認知されていて、かつ、よく見ると以前見たときから少し変化しているものを、より情報処理しやすい傾向がある」という研究があ…

「Moat」と「競争優位」

私が「Moat」という言葉に触れたのは、以前に関わっていたスタートアップ企業の経営会議の議論の中だった。そのときに手元で検索したところ、確かこの記事に行き着いた。 newspicks.com "「Moat」は、マイケル・ポーターの「競争優位」と同じ意味ではないか…

「明白すぎる非連続性のジレンマ」

一利用者としてChatGPTを使っていると、その技術的な進化の早さ、そしてそれがもたらす利用者の知覚価値の進化の早さに感動すら感じます。 そんな「技術的な進化の早さ and/or 非連続性→利用者への提供価値の進化の早さ and/or 非連続性」が、ChatGPTを提供…

人工知能は創造的な思考を促進するか ―認知科学の観点から―

阿部慶賀(2019) の『創造性はどこからくるか: 潜在処理,外的資源,身体性から考える』(共立出版)を読んでいて、その中の第4章「外的資源としての他者」が、人工知能が創造的な思考を促進するかについて、認知科学の観点から整理できそうだと気づいたので、以…

「センスメイキング」についてのメモ

最近、ビジネスにおける創造性とは何かを考え直すために、「センスメイキング」について論じた本を読み直している。そんな中で、文化的な探索に基づいて洞察を深掘りしながらアイディアを生み出すことを提案しているクリスチャン・マスビアウの『センスメイ…

「β版による学習」と「実験に基づく意思決定」と「リーン・スタートアップ」

はじめに エリック・リースの「リーン・スタートアップ」を読んだ (Ries 2011)。 この本が2012年に日本で刊行されたとき、私の周囲でもこの本は話題になっていたのだが、当時私は、「リーン・スタートアップ」を、昔から知られている概念を別のキーワードで…

「ネットワーク効果」についてのメモ

数多くのMEGA TECH企業を育ててきたことで知られるシリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)のゼネラルパートナーのAndrew Chenが書いた「ネットワークエフェクト」が、今日的なTECH企業の思考の本質を捉えていた本でし…

デジタル情報技術が価値創造プロセスに与えた影響の整理 (2023.2)

一般的に「デジタル」と呼ばれる情報技術が、企業が価値を創造するプロセスにおいて、1985年から今日あたりまでの間にどのような影響を与え、何が起こったかについて、ざっくりと整理をしてみました。 【前提】価値を創造するプロセスが「物理的な部分」から…

ランダム化比較試験はなぜ因果関係を証明できるのか

ランダム化比較試験はなぜ因果関係を証明できるのかについて、ジューディア・パール&ダナ・マッケンジー(2022)『因果推論の科学』文藝春秋にあった因果ダイアグラムを使った説明が面白かったのでメモ。 例えば、「畑全体に肥料1を一様に与えた場合、肥料2…

「コライダーバイアス」についてのメモ

ジューディア・パール&ダナ・マッケンジー(2022)『因果推論の科学』文藝春秋 の中に登場する「コライダーバイアス」という概念が面白かったので以下メモ。 「コライダー(合流)」は、2つのリンクでつながる3ノードのネットワーク(以後「ジャンクション」…

柄谷行人の「世界史の構造」の復習

柄谷行人(2022)『力と交換様式』 岩波書店 を読む前提として、この議論のベースとなっている、柄谷行人(2010)『世界史の構造』 岩波書店から、交換様式A-Dと、それと対応する権力(力)の種類、歴史的/近代の社会構成体、世界システムについて、以下整…