及川直彦のテキストのアーカイブ

及川直彦が書いたテキストと興味を持ったテキストのアーカイブ

Perfumeファンのセグメンテーション仮説ver.1

Perfumeのライブに行くと、同じ会場にいる観客の中でも、複数の異なるタイプの顧客がいることを感じます。さすがにいつもの仕事や学術研究のように、調査票の50くらいの質問に回答いただいて因子分析をする手間はかけていないのですが、以下私のライブ、知人からのコメント、ネットの発言などの観察に基づいて解釈したセグメンテーション仮説 ver.1です。

セグメントI:
地下アイドル発掘マニア Pefumeの名前を私が最初に知ったのは、私の同居人(妻)から、彼女のネットコミュニティの友人がPerfumeが凄いと言っているという話でした。確か2000年代中盤頃、今考えると、おそらく2007年の「Polyrhythm」(https://www.youtube.com/watch?v=KbiSxunJatM)が発売された頃。「広島の地下アイドルがテクノに転向して、なんか面白いことやっていて」というその友人のコメントを伝え聞いたのが私の最初のPerfumeとの接点だったと記憶しています。(そのときに、「ふ〜ん、テクノに転向したアイドルねぇ〜」と冷たいリアクションをした自分の先見の明のなさを、今となっては悔やんでも悔やみきれないです。)「Polyrhythm」の一年前の「Perfume〜Complete Best〜」発売後の引退の噂(実は噂ではなくマジだったらしい)に対抗して、YouTubeに映像をアップした伝説の人たちも、ここに分類していいでしょう。 このままだと引退してしまいそうな、あの真面目で一生懸命な娘たちをなんとかしたいという「育てゲー」、メジャーになった後は見守っていなければという「保護者モード」が、彼ら・彼女らをドライブする要因のようです。ライブでも、この方々らしい、やや年齢高めの男女の方々を1割くらい見かけます。

セグメントII:
ザ・アイドルファン Perfumeのライブに行くと、男性ひとりか、男性二人組で来ている人たちがいます。見ていると正直ちょっと○○イのですが、隣りに座ると礼儀正しくて感じよい方だったりします。メンバーとの結婚を夢見ている人たちはその後の諸々の報道でさすがに減ったのでしょうが、今でも疑似恋愛が彼らをドライブする要因なのでしょう。 この方々が最近のライブでもおそらく4割くらいで、おそらく今でも最大の勢力だと思います。この方々が今でもPerfumeを支えているのは間違いないので、メンバーのハッピーなニュースにめげず、どうかこれからもずっとファンでいてください。

セグメントIII:
なんとなくTECHNO/EDMファン Perfumeの中に懐かしいTECHNO POPの要素や、EDMの要素を見出だして興味を持っている人たちです。Perfumeに関する会話で、同時に「中田ヤスタカ」「cupsele」あるいは「真鍋大度」「Rhizomatiks」といった固有名詞が頻出する人たちです。 ここ数年のEDM系のインターネットラジオで、ボーカルが日本語のかっこいい曲がよく流れるなぁ、と思っていたら、それが後に「Party Maker」(https://www.youtube.com/watch?v=rFcnCCX2kN8)という曲であるということを発見してPerfumeを聞き始めた私もここに入るでしょう。 Cannes Lions 2013における「Spending All My Times」(https://www.youtube.com/watch?v=RKBpq8te6MY)や、SXSW 2015における「Story」(https://www.youtube.com/watch?v=zZiPIgCtIxg)みたいなバキバキのパフォーマンスが好きな反面、「Cling Cling」(https://www.youtube.com/watch?v=guqVgQFvXXY)のような「今さらまだアイドル路線かい」という曲には反感を感じる彼ら・彼女らが、今回のアルバムとライブで、アレンジをがらりと変えた「Cling Cling」に踊らされることになるとは、おそらく予想できなかったでしょう。今回のライブではざっと3割くらいでしょうか。 このファン、とにかくPerfumeがやることにいちいちクリティカルでうるさいです。もっと素直にPerfumeを楽しんでもよいのではないでしょうか。

セグメントIV:
共感しても安心なメジャーなもの好き Perfumeがメジャーになってから、その誰もが疑わないメジャーな存在であること、でもよく聞くと、そこに至るまでには私たちのようなべたな苦労していたというエピソードもあることを知り、ますますファンになっている人たちです。この層は、おそらくJPN以後取り込んだ女性層が多いような気がします。今回のライブではざっと2割くらいでしょうか。 この層が入ってくれることで、Perfumeのファン層が増えてくれていること、感謝です。

上記がざっくりとしたPerfumeファンのセグメントの仮説です。今日段階ではざっくりし過ぎている感がありますので、随時加筆・修正を試みます。

さて、今後の展開ですが、セグメントI、II、IIIをうまく取り込み続け、新たにセグメントIVを広げていくことで、海外マーケットに広げるMomentumが創れれば、確かにこの全セグメントが幸せになります。しかしながら、さじ加減を間違えると、セグメントIIが離脱するか、セグメントIIIが離脱するかとなり、いずれかが離脱したらセグメントIVが「メジャーでないもの」となるため離脱する、という危険もあります。

容易ではないチャレンジだとは十分存じ上げていますが、前者となる幸運を心から祈っております。 そして私も、ささやかながらNew York公演に応援に行きますよ。

(2016年7月4日にFacebookに投稿したテキストを再掲)