及川直彦のテキストのアーカイブ

及川直彦が書いたテキストと興味を持ったテキストのアーカイブ

繰り返しとバリエーションの効果(続き)

前回の「繰り返しとバリエーションの効果」を書いたときに探していた、

"我々は「以前見たのと同じもの」だと認知されていて、かつ、よく見ると以前見たときから少し変化しているものを、より情報処理しやすい傾向がある」"
 
というモデルの話の続きです。
 
そのときは、"「以前見たのと同じもの」だと認知されているものを、より情報処理しやすい傾向がある"(「単純接触効果」)については対応する研究は見つけることができたのですが、"かつ、よく見ると以前見たときから少し変化しているものを、より情報処理しやすい傾向がある"(「Variation(同一対象の多様性)」の効果)については見つけることができませんでした。
でもその翌日に、ゼミの濱本さんが見つけてくれました。川上(2015)です。
 
"従来,効果を強化する最大の要因として,同一の刺激への接触回数の多さが挙げられていた。すなわち,反復接触の増加と共にその刺激への親近性が高まるため,効果が強化されると考えられてきた。しかし,川上・吉田(2011)の知見は,単一の刺激を多数回呈示するよりも,むしろ複数の刺激を少数回ずつ呈示した方が効果が強いことを意味している。”
”ここから示唆されるのは,単純接触効果における「反復」と「変化」の役割である。一見すると,反復と変化という要因は相反するもののように思われる。しかしながら,前述のカテゴリという観点から考えると,反復の中の変化が意 味を持ち始める。すなわち,変化が効果を持つのは, ある共通性の中での変化であり,それがカテゴリであ る。表情は異なっていても「同一人物」であるという 広い意味でのカテゴリレベルでの「反復」に起因する親近性と,その人物に関する複数の刺激に接触することによるそのカテゴリ内での「変化」による新奇性が単純接触効果を強化すると考えられる。つまり,対象への多面的な接触を行うことで,単一の側面への接触 に比べて,その対象についての立体的な理解が促進されることによって,効果が強化される。 "
 
これですね。そして、ここで言及されている川上・吉田(2011)の実験2(多表情接触人物・単一表 情接触人物・接触なし(コントロール)による好意度の違い)の結果はこちらです。

川上・吉田(2011)

doi.org

「Variation(同一対象の多様性)」の効果も先行研究で確認されていたことを無事特定できました。ということで一件落着。
 
資料
川上直秋, & 吉田富二雄. (2011). 多面的単純接触効果── 連合強度を指標として──. 心理学研究82(5), 424-432.
川上直秋. (2015). 単純接触効果と無意識 われわれの好意はどこから来るのか. エモーション・スタディーズ1(1), 81-86.