(2020年5月30日にFacebookに投稿したテキストを再掲)
精緻化見込みモデルもしくは二重過程理論についてのメモ
(2020年5月30日にFacebookに投稿したテキストを再掲)
(2020年4月12日にFacebookに投稿したテキストを再掲)
Perfumeのライブに行くと、同じ会場にいる観客の中でも、複数の異なるタイプの顧客がいることを感じます。さすがにいつもの仕事や学術研究のように、調査票の50くらいの質問に回答いただいて因子分析をする手間はかけていないのですが、以下私のライブ、知人からのコメント、ネットの発言などの観察に基づいて解釈したセグメンテーション仮説 ver.1です。
セグメントI:
地下アイドル発掘マニア Pefumeの名前を私が最初に知ったのは、私の同居人(妻)から、彼女のネットコミュニティの友人がPerfumeが凄いと言っているという話でした。確か2000年代中盤頃、今考えると、おそらく2007年の「Polyrhythm」(https://www.youtube.com/watch?v=KbiSxunJatM)が発売された頃。「広島の地下アイドルがテクノに転向して、なんか面白いことやっていて」というその友人のコメントを伝え聞いたのが私の最初のPerfumeとの接点だったと記憶しています。(そのときに、「ふ〜ん、テクノに転向したアイドルねぇ〜」と冷たいリアクションをした自分の先見の明のなさを、今となっては悔やんでも悔やみきれないです。)「Polyrhythm」の一年前の「Perfume〜Complete Best〜」発売後の引退の噂(実は噂ではなくマジだったらしい)に対抗して、YouTubeに映像をアップした伝説の人たちも、ここに分類していいでしょう。 このままだと引退してしまいそうな、あの真面目で一生懸命な娘たちをなんとかしたいという「育てゲー」、メジャーになった後は見守っていなければという「保護者モード」が、彼ら・彼女らをドライブする要因のようです。ライブでも、この方々らしい、やや年齢高めの男女の方々を1割くらい見かけます。
セグメントII:
ザ・アイドルファン Perfumeのライブに行くと、男性ひとりか、男性二人組で来ている人たちがいます。見ていると正直ちょっと○○イのですが、隣りに座ると礼儀正しくて感じよい方だったりします。メンバーとの結婚を夢見ている人たちはその後の諸々の報道でさすがに減ったのでしょうが、今でも疑似恋愛が彼らをドライブする要因なのでしょう。 この方々が最近のライブでもおそらく4割くらいで、おそらく今でも最大の勢力だと思います。この方々が今でもPerfumeを支えているのは間違いないので、メンバーのハッピーなニュースにめげず、どうかこれからもずっとファンでいてください。
セグメントIII:
なんとなくTECHNO/EDMファン Perfumeの中に懐かしいTECHNO POPの要素や、EDMの要素を見出だして興味を持っている人たちです。Perfumeに関する会話で、同時に「中田ヤスタカ」「cupsele」あるいは「真鍋大度」「Rhizomatiks」といった固有名詞が頻出する人たちです。 ここ数年のEDM系のインターネットラジオで、ボーカルが日本語のかっこいい曲がよく流れるなぁ、と思っていたら、それが後に「Party Maker」(https://www.youtube.com/watch?v=rFcnCCX2kN8)という曲であるということを発見してPerfumeを聞き始めた私もここに入るでしょう。 Cannes Lions 2013における「Spending All My Times」(https://www.youtube.com/watch?v=RKBpq8te6MY)や、SXSW 2015における「Story」(https://www.youtube.com/watch?v=zZiPIgCtIxg)みたいなバキバキのパフォーマンスが好きな反面、「Cling Cling」(https://www.youtube.com/watch?v=guqVgQFvXXY)のような「今さらまだアイドル路線かい」という曲には反感を感じる彼ら・彼女らが、今回のアルバムとライブで、アレンジをがらりと変えた「Cling Cling」に踊らされることになるとは、おそらく予想できなかったでしょう。今回のライブではざっと3割くらいでしょうか。 このファン、とにかくPerfumeがやることにいちいちクリティカルでうるさいです。もっと素直にPerfumeを楽しんでもよいのではないでしょうか。
セグメントIV:
共感しても安心なメジャーなもの好き Perfumeがメジャーになってから、その誰もが疑わないメジャーな存在であること、でもよく聞くと、そこに至るまでには私たちのようなべたな苦労していたというエピソードもあることを知り、ますますファンになっている人たちです。この層は、おそらくJPN以後取り込んだ女性層が多いような気がします。今回のライブではざっと2割くらいでしょうか。 この層が入ってくれることで、Perfumeのファン層が増えてくれていること、感謝です。
上記がざっくりとしたPerfumeファンのセグメントの仮説です。今日段階ではざっくりし過ぎている感がありますので、随時加筆・修正を試みます。
さて、今後の展開ですが、セグメントI、II、IIIをうまく取り込み続け、新たにセグメントIVを広げていくことで、海外マーケットに広げるMomentumが創れれば、確かにこの全セグメントが幸せになります。しかしながら、さじ加減を間違えると、セグメントIIが離脱するか、セグメントIIIが離脱するかとなり、いずれかが離脱したらセグメントIVが「メジャーでないもの」となるため離脱する、という危険もあります。
容易ではないチャレンジだとは十分存じ上げていますが、前者となる幸運を心から祈っております。 そして私も、ささやかながらNew York公演に応援に行きますよ。
(2016年7月4日にFacebookに投稿したテキストを再掲)
“ …単純なクロス集計から売上を増加させる可能性のある要因を明らかにし、またいくら売上が増加するのかといった額の試算も行ったが、これはあくまで皮算用だ。なぜなら、この計算が「誤差」というものをまったく考慮していないからである”〔西内啓(2013)「統計学が最強の学問である」3章11節「p値5%以下を目指せ!」〕
“ …こうした誤差を考えないクロス集計による皮算用、というのもビジネスの現場ではしばしば行われている。
たとえば私が以前統計学の講師として招かれたEC企業では、積極的に「A/Bテスト」を行っている。クリックするバナーのサイズを変えたり、ページ間の画面遷移を変えたり、ページの文面やフォントを変えたり、といった細かいデザイン面や機能面の変更を行ううえで、「実際、どちらのデザインがよいのか」といった評価を検証しようというのだ(中略)
多くの場合はユーザーのアクセスに対してランダムにAパターンとBパターンのサイトを開き、一定期間収集されたアクセスログをもとにAパターンとBパターンの比較を行うことになる(ランダムに表示を分けることがむずかしい場合、1週間など決まった期間ごとに表示を変えるという場合もある。)
比較されるのはたいていバナークリック率や商品の売上、有料会員への入会率といった利益に直結する数字についてであり、AパターンとBパターンのどちらが優れていたかという判断のもと、その後優れていたパターンがサイトに正式に採用されるのだ(中略) …そのEC企業は力を入れて毎月のように細かいA/Bテストを行っていた。コンマ数%のコンバージョン(購買率)の違いは年間にして億単位の売上に繋がると考えられたのだから、専任のチームを編成し、これまでの傾向から新たな改善パターンを考え続ける、というのは素晴らしい戦略である。
コンバージョンの上がる改善案を出したスタッフは定例のミーティングの中で賞賛され、実際に部署全体が祝福ムードに包まれていたそうである。データを経営に活かす姿勢として彼らの取り組みは素晴らしいものだ。
しかしながら、ここで落とし穴となるのが、彼らが誤差のことを考えていなかったという点である(中略)
…サイト訪問者に対して、ランダムに既存のAパターンと改善したBパターンをそれぞれ10万人ずつに対して見せたログを分析した結果、既存パターンでは購買率が9.5%であったのに対し、デザインを改善した結果9.6%に伸びたというのである。
前節の考え方に則れば、こうした新しいデザインを採用するだけで売上は約1.01倍(=9.6%÷9.5%)に伸びるという可能性が示されたということである。つまりもし彼らに現在10億円の売上があったとすれば約1,000万円、もし100億円の売上があったとすれば約1億円分の売上増加が見込まれるということだ。しかも何か特別の投資を行うわけではなく、単にページの細かいデザインを変更しただけで、である。これなら確かに祝福ムードに包まれるのも不思議ではない。
だが残念なことに、この差が意味のある差なのか、それとも誤差なのかはよくわからないのだ(中略)
…A/Bテストの結果に対してその場でカイ二乗検定を行ってみると、「実際には何の差もない状況でもデータの誤差によってこの程度(10万人中100人またはそれ以上)の差が生じる確率は44.7%である」という結果が示された。
この「実際には何の差もないのに誤差や偶然によってたまたまデータのような差(正確にはそれ以上に極端な差を含む)が生じる確率」のことを統計学の専門用語でp値という。 このp値が小さければ(慣例的には5%以下)、それに基づいて科学者たちは「この結果は偶然得られたとは考えにくい」と判断するというわけである。
5%以下であるべきp値が44.7%であるとは、つまり、彼女たちがデザインを褒めたり、チームで祝福していたりした結果が、真に今後何億円もの売上を約束するかどうかはまったくわからない、ということだ。
彼女たちが行っていたことは、いわば、誰かがコインを1回投げて表が出たというだけで「すごい!表が出続ける魔法のコインが見つかった!」とか、「すごい!この人はコインで表を出し続ける必勝法を身につけた!」と喜んでいる状態とまったく変わらないのだ。
本当に意味があったのかなかったのか、よくわからないまま定期的な改善を重ねて一喜一憂していても、彼女たちの仕事が利益に繋がっているのかはやはりよくわからない”
〔西内啓(2013)「統計学が最強の学問である」3章11節「p値5%以下を目指せ!」〕
西内氏が挙げているこの事例は、この分析の結果を「何か特別の投資を行うわけではなく、単にページの細かいデザインを変更しただけ」の意思決定に活用しているだけなので、まだ被害は、もし気づいていないマイナスの効果がなかったならば大きな問題にはならないだろう
しかしながら、これが、数十億円の金額の投資を伴ったり、大がかりな組織的な調整が求められる施策の意思決定だったらどうだろうか?
前者ならば、効果がないものや、逆効果を生み出しているものに数十億円の金額を注ぎ込んでいることとなり、後者ならば、仮にしばらく経ってどうやら意思決定が間違っていたらしいことに気がついても、そこから軌道修正をするのに再び大がかりな組織的な調整が求められ、そのプロセスの中で、社内には経営の意思決定に対する不信感が刻まれることになるだろう。
標準誤差の公式によると、母集団が10,000件、サンプル数が30件、真の値が含まれている割合が80%の場合、標準誤差は7.3%となり、 80%-(標準誤差×2)~80%+(標準誤差×2)に真の値が含まれている確率が95%となる。ちなみに、サンプル数を2倍(60件)にした場合は標準誤差が4.9%となり、70.2%~89.8%に真の値が含まれている確率が95%となる