及川直彦のテキストのアーカイブ

及川直彦が書いたテキストと興味を持ったテキストのアーカイブ

ダイレクト・マーケティングの「スプリットラン」

 先日のゼミで今日のデジタル広告の世界で「ブランディング広告」と対比して使われる「パフォーマンス広告」のルーツが、「ダイレクト・マーケティング」であることを紹介したのだが、それをきっかけに、レスター・ワンダーマンの「売る広告」の2nd editionの翻訳を読み直していた。
 ワンダーマンが1940年に「スプリットラン」に出会ったこの場面は、マーケティングの歴史の名場面のひとつと言っても過言ではないだろう。

 

“ 私たちの会社は小さく、二人ともまだ若く、このビジネスでは新参者だった。自分たちの制作した広告が効果的であると証明するだけではなく、競争相手のものより効き目があることを示さなければならなかった。広告や手紙をテストすることを学び、広告から得られる結果をクライアンに記録してもらった。私たちはレスポンス広告について驚くべき事実を発見しつつあった。たとえば、大きな広告は金がかかるが、小さな広告よりも費用に対する効果が高く、利益も大きかった。広告で一番効き目のある言葉は「無料」、二番目は「新しい」であることも知った。しかし何よりも大切なのは、私たちの制作した広告に利益を生むものがあると証明できた点だ。利益を出せなかった広告については、悪かったところがわかるようになった。

 広告のテストをする良い方法として「スプリットラン」というやり方を考案した。ある製品に対して二種類の広告を制作し、それを雑誌や新聞の総発行部数の半分ずつに掲載して効果を比較するやり方だ。私たちは必ず成功すると思われる出来の良い広告や手紙もこの方法でテストし、どの広告がより良い結果を得られるか調べた。クライアントも見込客も、私たちが売るのは意見ではなく結果であること、主観的な判断ではなく客観的な証拠であるという事実を尊重してくれるようになった。” (「ワンダーマンの『売る広告』顧客の心をつかむマーケティング」 31p-32p)

 

資料: Lester Wunderman (2004), Being Direct, 2nd edition. (藤田浩二監訳「ワンダーマンの『売る広告』顧客の心をつかむマーケティング」翔泳社、2006年)